LibericaとExcelsa — 世界の一パーセント未満、第三の選択肢
2026-07-04
ArabicaとRobustaで世界の生産量のほぼすべてが説明されてしまうため、Liberica(Coffea liberica)の存在を知らないまま長くコーヒーを飲み続けることは十分にあり得ます。全生産量に占める割合は一パーセントにも満たない。しかしこの種は、コーヒーの歴史の重要な局面に何度も顔を出しています。
西アフリカの巨木
原産地は西アフリカ、リベリア周辺の低地林です。十九世紀後半に学術記載されました。最大の特徴はその大きさで、樹高は放任すれば九メートルから、条件によっては二十メートル近くに達します。Arabicaが人の背丈ほどに剪定されて管理されるのに対し、Libericaは文字通り森の木です。葉も実も種子も、他の二種と比べて明らかに大きい。
この巨大さは栽培上の難点でもあります。収穫に手間がかかり、単位面積あたりの効率も良くない。果肉が厚く硬いため、精製にも余分な労力を要します。商業的に主流になれなかった理由はここにあります。
Scale
樹の大きさを、人と並べる
人
1.7m
Arabica
人の背丈ほど
剪定して管理
Liên Khươngの在来樹
5m以上
収穫に梯子が要る
Liberica
9m〜
条件により20m近く
さび病が呼び寄せた、二度目の登場
十九世紀後半のさび病禍で、Libericaもまた「Arabicaの代替」として世界各地に広められました。特に東南アジアでの普及が目立ちます。フィリピンではバタンガスやカビテを中心にBarakoの名で親しまれ、地域文化の一部になりました。ベトナムでは樹の姿がジャックフルーツの木に似ることから「cà phê mít」(ジャックフルーツのコーヒー)と呼ばれ、農家の庭先や防風林として残されてきました。私たちが扱うLiên KhươngのLibericaも、樹齢五十年を超える在来樹から収穫されたものです。
その後Canephoraが本格導入されると、収量と扱いやすさで劣るLibericaは次第に脇へ追いやられます。以来百年余り、ごく限られた地域で細々と守られてきました。
Excelsaをめぐる整理
Excelsaは独立した種として扱われた時期がありますが、現在ではLibericaの変種(Coffea liberica var. dewevrei)として位置づけるのが一般的です。実はLibericaよりやや小ぶりで、風味はより酸が立ち、果実感が出やすいと言われます。市場ではLibericaとExcelsaが混同されたまま流通していることも多く、この点は買い手として注意が必要です。
味の輪郭と、いま注目される理由
Libericaの風味は独特です。ジャックフルーツやドリアンに例えられる熱帯果実の香り、木質やスモークを思わせる要素、そして厚みのある口当たり。Arabicaの繊細さともRobustaの重さとも違う、はっきりと第三の方向を向いた味です。好みは分かれますが、一度飲めば記憶に残ります。
Compare
三つの種を並べる
近年この種が再評価されているのは、気候変動が理由です。低地の高温に耐え、病害にも比較的強い。Arabicaの適地が標高を上げながら縮小していく未来を見据えたとき、Libericaは現実的な選択肢の一つとして議論の場に戻ってきました。
希少であることは、それ自体が価値ではありません。ただ、選択肢が三つあると知っていることと、二つしか知らないことの間には、確かな差があります。


