Mosto Natural — 果汁を還元するという発想
2026-07-17
mostoはスペイン語やイタリア語で、ブドウの搾汁——ワインになる前の果汁を指す言葉です。この言葉がコーヒーの精製工程で使われるようになったのは比較的最近のことで、生産者主導の実験の中から生まれてきました。
基本的な考え方
果肉除去の工程では、大量の果肉と果汁が副産物として出ます。従来これは廃棄されるか、堆肥として畑に戻されるものでした。
Mosto系の手法は、この果汁を捨てずに使います。搾って集めた糖度の高い果汁を、乾燥中の豆、あるいは発酵中の豆に還元する。果実由来の糖と有機酸を、通常より高い濃度で種子に接触させることになります。
狙いはNaturalの持つ果実感と甘さを、より制御された形で引き出すことです。まるごと乾燥させるNaturalでは果肉の量も状態もばらつきますが、果汁を分離して量を調整すれば再現性を高められる、という発想です。
Mosto
捨てていた果汁を、豆に戻す
チェリー
収穫
果肉と果汁
果肉を外すと出る
果汁(mosto)
搾って集める
豆に戻す
発酵中・乾燥中に
用語が標準化されていないこと
ここで正直にお伝えしておくべきことがあります。「Mosto Natural」という呼称は、国際的に定義された標準用語ではありません。
生産者や輸出業者によって指す内容に幅があり、果汁を還元する手法全般を指す場合もあれば、特定の農園独自の工程名として使われている場合もあります。Anaerobicと組み合わされることも多く、境界は曖昧です。
したがってこの名前が付いた豆を評価するときは、名称そのものではなく、具体的にどういう工程を経たのかを確認する必要があります。果汁をどの段階で、どれだけの量、何時間接触させたのか。そこまで説明できる売り手かどうかが判断材料になります。
現時点での位置づけ
風味としては、Naturalの果実感を保ちながら、より甘さの輪郭がはっきりする傾向があると報告されています。ただし前述の通り工程の幅が大きく、一般化した説明は難しいのが実情です。
私たちが扱うロットでは、Liên KhươngのLibericaとCầu ĐấtのArabicaがこの手法で仕上げられています。生産者から工程の詳細を確認したうえで、商品ページにその内容を記載していく方針です。目新しい名前を並べることが目的ではなく、何が行われたかを追跡できることに意味があると考えているからです。
新しい手法が生まれ、名前が付き、やがて定義が整理されていく。Mosto系の手法は、今まさにその途上にあります。


