Pulped Natural — ブラジルが磨いた、粘液質を残す乾燥
2026-10-20
Pulped Naturalは、収穫したチェリーから外皮と果肉を取り除き、粘液質を残したまま乾燥させる精製方法です。ブラジルで広く使われてきました。
工程だけを見ると、中米で発達したHoney Processとほとんど同じです。それでも別の名前で呼ばれ続けているのは、生まれた土地と、それぞれが解こうとした課題が違うからです。
工程
収穫したチェリーは、まず水槽で選別されます。熟していない実や軽い実が浮いて分かれ、選別の第一段階になります。
次に果肉除去機にかけます。熟した実は柔らかく果肉が簡単に外れますが、未熟な硬い実はそのまま残りやすい。この性質を使って、果肉を外す工程で熟度の選別も同時に行えるのが、Pulped Naturalの実務上の利点です。
果肉を外した豆は発酵槽を通さず、粘液質をまとったまま乾燥に入ります。コンクリートの乾燥場(patio)や乾燥台に薄く広げ、こまめに攪拌しながら乾かします。粘液質の糖分で豆どうしがくっつきやすいため、乾燥の初期ほど丁寧な管理が必要です。大規模な農園では、途中から機械乾燥に切り替えることもあります。水分値十一から十二パーセントまで落としたら、内果皮を外して出荷を待ちます。
Flow
工程の順番で見る(上から下へ進む)
密閉発酵を差し込む位置: Anaerobic・Carbonic Macerationなど(果肉を外した後に行うことも)
Honeyとの違い
Pulped Naturalは、一九九〇年代のブラジルで広まった方法として知られています。それまでブラジルではNaturalが主流でしたが、実ごと乾かす方法は熟度のばらつきや発酵のリスクを抱えていました。果肉を外してから乾かすことでそのリスクを減らし、品質を安定させる。出発点は「Naturalの改良」にあります。
一方のHoneyは、コスタリカの小規模な精製所が、残す粘液質の量と乾燥の速さで味を作り分ける技法として体系化したものです。こちらは「Washedに甘さを足す」方向から来た、と整理すると分かりやすいかもしれません。White、Yellow、Red、Blackといった色の呼び分けはHoneyの側の習慣で、Pulped Naturalではあまり使われません。
もっとも、二つの名前の境界は地域や生産者によって異なります。同じ工程に別の名前が付いていることも、同じ名前で別の工程を指していることもあります。
風味の傾向
カップは甘さが前に出て、ナッツやチョコレートを思わせる風味と、丸い口当たりが特徴になります。Naturalほど発酵由来の果実香は強くなく、Washedよりもボディと甘さがある。その穏やかなバランスから、エスプレッソのベースとして使われることも多い方法です。
名前より工程を
Pulped NaturalとHoneyのどちらで呼ばれていても、確認すべき点は変わりません。果肉を外したあと発酵槽を通したかどうか、粘液質をどの程度残したか、何日かけてどう乾かしたか。名前は手がかりにすぎず、カップの中身を決めるのはその先の工程です。
各精製方法との違いは、精製方法を比べるで図にまとめています。


