Honey Process — 粘液質をどこまで残すか、という調整弁
2026-07-15
Honey Processという名は、蜂蜜を使うという意味ではありません。粘液質を残したまま乾燥させる工程で、豆の表面がべたつき、蜂蜜をまとったように見えることに由来します。ブラジルで発達したPulped Naturalとは工程がよく似ており、同じものとして扱われることも少なくありません。
WashedとNaturalの中間
工程はWashedの途中まで同じです。果肉除去機で果肉を取り除く。しかしそこで発酵槽に入れず、粘液質を残したまま乾燥に移ります。
つまりNaturalの「果肉ごと乾かす」とWashedの「粘液質を落として乾かす」の中間に位置します。果肉由来の甘さをある程度取り込みつつ、Naturalほど発酵のリスクを負わない。設計思想としては折衷案ですが、この折衷が非常に有効でした。
Cross-section
乾燥に入るとき、豆は何をまとっているか
- 外皮skin外した
- 果肉pulp外した
- 粘液質mucilage残る
- 内果皮parchment残る
- 銀皮silver skin残る
- 種子(生豆)seed残る
外皮と果肉だけを機械で外し、粘液質をまとったまま乾かす。残す粘液質の量で仕上がりが変わる。
内果皮を外すときの水分値
11〜12%
White・Yellow・Red・Black
Honeyには色による段階分けがあります。厳密な国際基準があるわけではありませんが、おおむね次のように理解されています。
White Honeyは粘液質をほとんど落とし、短期間で乾燥させたもの。Washedに近いクリーンな仕上がりになります。Yellow Honeyは粘液質を半分程度残し、日照下で比較的早く乾かします。
Red Honeyは粘液質を多く残し、日陰を使って乾燥をゆっくり進めます。Black Honeyは粘液質をほぼすべて残し、覆いをかけて最も長く乾燥させる。色が濃くなるほど果実感と甘さが増し、同時に管理の難易度も上がります。
ただし色の定義は、乾燥の方法や日照、粘液質の残し方などによって生産者ごとに異なります。色の名前だけで味を断定することはできません。
Honey colors
White・Yellow・Red・Black — 残す量と乾かし方
White
ほとんど落とす
短期間で乾かす
Yellow
半分ほど残す
日なたで比較的早く
Red
多く残す
日陰でゆっくり
Black
ほぼすべて残す
覆いをかけて最も長く
右へ行くほど増える
コスタリカが広めた
この手法を体系化し、世界に広めたのはコスタリカの生産者たちです。二〇〇〇年代、コーヒー価格の低迷を受けて、小規模生産者が自前の小さな精製所(micro mill)を持ち、差別化を図る動きが広がりました。Honey Processはその中心的な武器になりました。
水の使用量を減らせることも、環境負荷の観点から評価されています。
調整弁としての価値
Honey Processの本質は、生産者が味を「設計できる」点にあります。同じ豆から、粘液質の残し方と乾燥速度を変えるだけで、複数の異なるロットを作れる。
Robustaでも、カカオや黒糖のような甘さを引き出す方法としてHoneyが選ばれることがあります。Washedでは硬さが出やすく、Naturalでは発酵の要素が強く出すぎる。その中間の着地点として選ばれる、という考え方です。


