Washed — 豆の素性が、そのまま出る
2026-07-13
Washed(水洗式)は、スペシャルティコーヒーの世界で最も広く採用されている精製方法です。中米、コロンビア、ケニア、エチオピアの一部で主流になっているほか、私たちが扱うロットでは、Lâm Đồng省Phúc ThọのRobusta(Nguyễn Sơn Tùng)がこの方法で仕上げられています。
工程
収穫したチェリーはまず水槽に入れられます。ここで未熟豆や欠陥豆が浮いて分離されるため、選別の第一段階を兼ねています。
次に果肉除去機(pulper)で果肉を取り除きます。この時点で豆の表面には、まだぬめりのある粘液質が残っています。これを取り除くために発酵槽へ移し、十二時間から三十六時間ほど置きます。水中で微生物が粘液質を分解する工程です。気温や標高によって必要な時間は変わり、ここの見極めが精製士の腕の見せどころになります。
分解が進んだら水で洗い流し、乾燥へ移ります。天日乾燥なら一週間から二週間、機械乾燥ならより短時間で水分値十一から十二パーセントまで落とします。
Cross-section
乾燥に入るとき、豆は何をまとっているか
- 外皮skin外した
- 果肉pulp外した
- 粘液質mucilage外した
- 内果皮parchment残る
- 銀皮silver skin残る
- 種子(生豆)seed残る
粘液質を発酵で分解して洗い流し、内果皮に包まれた状態で乾かす。
内果皮を外すときの水分値
11〜12%
Flow
工程の順番で見る(上から下へ進む)
密閉発酵を差し込む位置: Anaerobic・Carbonic Macerationなど(果肉を外した後に行うことも)
クリーンであるということ
Washedの最大の特徴は、カップのクリーンさです。果肉由来の成分が種子に長く接触しないため、余計な要素が乗りません。豆そのものが持つ酸の質、甘さ、香りが素直に現れます。
これは長所であると同時に、逃げ場がないということでもあります。未熟な豆が混ざっていれば青臭さがそのまま出ますし、標高が低く成熟が不十分なら平坦なカップになります。産地の力量が最も正直に出る方法だと言えます。
水という課題
Washedには相応の水量が必要です。産地によっては水の確保そのものが制約になりますし、発酵槽から出る排水の処理も環境上の問題として指摘されてきました。
これに対して、機械で粘液質を物理的に削り落とす手法(mechanical demucilage)もあります。水の使用量を大幅に減らせる一方、発酵過程で生まれる風味の複雑さは失われるとされ、品質重視の農園では今も伝統的な発酵が選ばれることが多いようです。
ケニア式という応用
ケニアでは発酵と洗浄を二度繰り返し、さらに洗浄後の豆をきれいな水に一晩浸けおく工程(soaking)が加わります。手間は増えますが、あの鋭く明快な酸を生む要因の一つと考えられています。この方法はDouble Fermentationで詳しく取り上げています。
同じ「Washed」という言葉の中に、これだけの幅がある。ラベルの一語で判断せず、その先を尋ねる価値がここにあります。


