Wet-Hulled(Giling Basah)— インドネシアだけが持つ、湿った脱穀
2026-07-18
スマトラのMandhelingを飲んだとき、他の産地にはない土や樹木、ハーブのような風味を感じたことがあるかもしれません。あの独特さの大部分は、品種でも標高でもなく、精製方法によって生まれています。
Giling Basahという工程
インドネシア語でGiling Basah、英語ではWet-HulledあるいはSemi-Washedと呼ばれます。工程は次のように進みます。
収穫したチェリーの果肉を除去し、短時間だけ発酵させて粘液質を落とし、洗浄します。ここまではWashedと大きく変わりません。
違いはこの先です。通常なら水分値十一から十二パーセントまで乾かしてから内果皮(parchment)を除去しますが、Giling Basahでは水分値が三十から三十五パーセント程度、まだかなり湿った状態で脱穀してしまいます。むき出しになった豆を、そこからさらに乾燥させて仕上げます。
Cross-section
乾燥に入るとき、豆は何をまとっているか
- 外皮skin外した
- 果肉pulp外した
- 粘液質mucilage外した
- 内果皮parchment残る
- 銀皮silver skin残る
- 種子(生豆)seed残る
Washedに近い状態で乾燥を始め、水分がまだ30〜35%ほど残るうちに内果皮を外す。むき出しになった豆を、そこから仕上げ乾燥する。(前半:内果皮を外す前)
内果皮を外すときの水分値
30〜35%
Flow
工程の順番で見る(上から下へ進む)
密閉発酵を差し込む位置: Anaerobic・Carbonic Macerationなど(果肉を外した後に行うことも)
なぜそうするのか
理由は気候です。スマトラ北部をはじめとするインドネシアの産地は、年間を通じて雨が多く湿度が高い。通常の方法では乾燥に時間がかかりすぎ、その間にカビや過発酵のリスクが高まります。
内果皮を早い段階で剥がしてしまえば、豆が直接空気に触れて乾燥が速く進みます。生産者が現金化までの時間を短縮できるという経済的な事情も、この方法が定着した背景にあります。つまり品質を狙って設計された工程というより、その土地の条件に対する現実的な解答として生まれたものです。
味と外見への影響
湿った状態で脱穀された豆は、青みがかった深い緑色になります。生豆の見た目だけでインドネシア産と分かるほど特徴的です。
カップは酸が低く抑えられ、口当たりは非常に重く、土壌やシダ、杉、スパイスを思わせる風味が現れます。「earthy」という表現がよく使われます。この個性は好みが明確に分かれるところで、クリーンさを重視する評価軸では欠点として扱われることもあります。
東南アジアの湿度という共通条件
ベトナムもまた高温多湿の国です。中部高原の乾季には強い日射が期待できますが、地域や時期によっては乾燥条件が厳しくなります。インドネシアがGiling Basahという解を見つけたように、それぞれの土地には、その気候に合った工程が必要になります。
精製方法を「正しい方法」と「劣った方法」で並べるのは、あまり意味のある見方ではありません。どの工程も、その土地の制約に対する答えとして存在しています。Giling Basahはその最も分かりやすい例です。各精製方法との違いは、精製方法を比べるで図にまとめています。


