品種の系譜を読む — TypicaからStarmayaまで、一枚の図で
2026-10-20
Arabicaの品種は、いまでは数百にのぼると言われます。けれどもその多くは、ごく少数の祖先から枝分かれしたものです。この記事では、Journalで取り上げてきた品種を一枚の系譜にまとめ、それぞれの性格を並べます。名前から各品種の記事へ移動できます。
二つの祖先
系譜の根元には、TypicaとBourbonという二つの系統があります。どちらもイエメンで栽培されていたArabicaに由来しますが、世界へ渡った道が違います。Typicaはオランダ人の手でジャワ島、アムステルダム、パリを経てカリブ海へ。Bourbonはフランス人の手でインド洋のブルボン島へ。この二つの道から、中南米とアフリカの主要な品種の多くが生まれました。
Route
Arabicaが世界へ渡った、二つの道
- エチオピア南西部原産地野生のArabicaが今も残る高地林
- イエメン(モカ港)栽培の始まりモカ港から積み出された
- ジャワ島17世紀末オランダ人がイエメンの苗を持ち出す
- アムステルダム1706年植物園へ送られる
- パリ1714年ルイ十四世に贈られ、王立植物園へ
- マルティニーク島1723年Gabriel de Clieuが苗を運ぶ。中南米のTypicaの源流
- ブルボン島(現レユニオン島)18世紀初頭フランス人がイエメンから運ぶ。Bourbonの名の由来
- アフリカ大陸19世紀半ば以降宣教師や入植者の手でアフリカ大陸と中南米へ
系譜を一枚で見る
二つの祖先から、品種はいくつかの道筋で増えていきました。背の低い変異(Caturra、Pacas、Villa Sarchi)、実の大きな変異(Maragogipe)、それらの掛け合わせ(Catuai、Pacamara)。二十世紀後半になると、さび病に強いTimor Hybridとの交配から、CatimorやSarchimorといった抵抗性の系統が生まれ、さらにその先にF1ハイブリッドのStarmayaがあります。Geishaだけは、エチオピアで採取された系統がほぼそのままの形で世界に出たものです。
Family tree
品種の系譜(上から下へ世代が進む)
← 横にスクロールできます →
- エチオピアの在来種 → Typica(イエメン経由)
- エチオピアの在来種 → Bourbon(イエメン経由)
- エチオピアの在来種 → Geisha
- Typica → Maragogipe
- Typica → Mundo Novo
- Bourbon → Mundo Novo
- Bourbon → Pacas
- Bourbon → Caturra
- Bourbon → Villa Sarchi
- Bourbon → SL28 / SL34
- Canephora → Timor Hybrid
- Maragogipe → Pacamara
- Pacas → Pacamara
- Mundo Novo → Catuai
- Caturra → Catuai
- Caturra → Catimor
- Timor Hybrid → Catimor
- Villa Sarchi → Sarchimor
- Timor Hybrid → Sarchimor
- Sarchimor → Marsellesa
- Sarchimor → Centroamericano
- エチオピアの野生種 → Centroamericano
- Marsellesa → Starmaya
- Centroamericano → Starmaya
品種が生まれる、いくつかの道
系譜の線は、すべて同じ意味を持っているわけではありません。品種の生まれ方は、おおむね次のように分けられます。
- 自然の突然変異:Caturra、Pacas、Maragogipe
- 自然の交配:Mundo Novo、Timor Hybrid
- 研究機関による交配と選抜:Catuai、Pacamara、Catimor
- すでにある樹からの選抜:SL28、SL34
- F1ハイブリッド:Centroamericano、Starmaya
- 在来の系統の採取:Geisha
性格を並べる
Traits
品種の性格を並べる
収量・病気・味の三角形
品種の歴史を振り返ると、収量、病害への強さ、そしてカップの質という三つを、どう両立させるかの試行錯誤だったことがわかります。TypicaやGeishaのように味は優れていても収量が低い品種、Caturraのように収量は高くてもさび病に弱い品種。Timor Hybridを取り入れた系統は病気に強くなった一方、カップの評価では長く苦戦してきました。
Starmayaのような新しいF1ハイブリッドは、この三つを同時に満たそうとする最新の試みです。品種は固定された分類ではなく、今も更新され続けています。
ベトナムとの接点
私たちが扱うCầu ĐấtとSơn LaのArabicaは、どちらもCatimorです。系譜をたどると、ブラジルで見つかったCaturraと、Canephoraとの自然交雑から生まれたTimor Hybridに行き着きます。Sơn Laでは、Starmayaを試験的に育てる区画も生まれています。
品種名は入口
品種名は、そのコーヒーの性格を知る手がかりにはなりますが、味を約束するものではありません。同じ品種でも、植えた標高や管理、精製によってカップは大きく変わります。系譜は、その手がかりを読むための地図として使ってください。


