Caturra — ブラジルの畑で見つかった、背の低い革命
2026-07-08
Caturraは、突然変異が産業を変えた分かりやすい例です。派手な発見譚はありませんが、その影響の広さでは他の品種を圧倒します。
矮性という変異
一九一〇年代、ブラジル南東部ミナスジェライス州の農園で、通常より背丈の低いBourbonの木が見つかりました。節と節の間が詰まり、全体がコンパクトにまとまる。この矮性(わいせい)の変異体が、後にCaturraと名づけられます。
背が低いことには実利があります。収穫の作業が楽になり、単位面積あたりにより多くの木を植えられる。同じ土地からより多くの実が採れるということです。Bourbon譲りのカップ品質を保ったまま生産性を上げられるこの品種は、中南米に急速に広がりました。コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ニカラグア——多くの産地で長く主力を務めています。
Dwarfism
矮性とは、節と節の間が詰まること
肥料を要求する木
ただしCaturraには条件があります。密植して高収量を出す分、土壌から吸い上げる養分も多い。十分な施肥と管理を怠ると、木がすぐに疲弊します。放任栽培には向かず、手をかけた分だけ応える品種です。
さび病への抵抗性も持ちません。Bourbon由来の弱点をそのまま受け継いでいるため、さび病の流行期には大きな打撃を受けてきました。二〇一二年前後に中米を襲った大流行では、Caturraを主体としていた農園ほど被害が深刻でした。
Timeline
一本の変異木が、畑の密度を変えるまで
- 1910年代
ブラジル・ミナスジェライス州の農園で、背丈の低いBourbonが見つかる
- その後
密植と収穫効率の良さから、コロンビアや中米へ急速に広がる
- 1940年代末〜
- 2012年前後
中米を襲ったさび病の大流行で、Caturra主体の農園ほど被害が深刻に
味の位置づけ
カップは明るくクリーンで、シトラス系の酸が出やすい。Bourbonほどの甘さの厚みはないものの、高標高で丁寧に育てられたCaturraは十分にスペシャルティの水準に達します。長らく「標準的な良質さ」の基準点として機能してきた品種です。
交配親としての役割
Caturraの矮性は育種上きわめて有用でした。Catuai(Mundo Novoとの交配)をはじめ、多くの品種がCaturraを片親にしています。さび病抵抗性を持つTimor Hybridとの交配から生まれたCatimor系統も、Caturraの血を引いています。
私たちが扱うCầu ĐấtとSơn LaのCatimorも、系譜を辿ればこの一本の変異木に行き着きます。ベトナムの高原とブラジルの畑が、百年越しで繋がっているわけです。
Family tree
品種の系譜(上から下へ世代が進む)
← 横にスクロールできます →
- エチオピアの在来種 → Typica(イエメン経由)
- エチオピアの在来種 → Bourbon(イエメン経由)
- エチオピアの在来種 → Geisha
- Typica → Maragogipe
- Typica → Mundo Novo
- Bourbon → Mundo Novo
- Bourbon → Pacas
- Bourbon → Caturra
- Bourbon → Villa Sarchi
- Bourbon → SL28 / SL34
- Canephora → Timor Hybrid
- Maragogipe → Pacamara
- Pacas → Pacamara
- Mundo Novo → Catuai
- Caturra → Catuai
- Caturra → Catimor
- Timor Hybrid → Catimor
- Villa Sarchi → Sarchimor
- Timor Hybrid → Sarchimor
- Sarchimor → Marsellesa
- Sarchimor → Centroamericano
- エチオピアの野生種 → Centroamericano
- Marsellesa → Starmaya
- Centroamericano → Starmaya
品種どうしのつながりと性格の違いは、品種の系譜を読むで一枚の図にまとめています。


