Bourbon — 島の名を持つ、甘さの系統
2026-07-06
BourbonはTypicaと並ぶ、栽培Arabicaのもう一つの大きな源流です。名の由来はインド洋に浮かぶブルボン島——現在のフランス領レユニオン島です。
別ルートで渡った系統
十八世紀初頭、フランス人がイエメンからブルボン島へコーヒーの苗を運びました。オランダ経由でジャワからカリブ海へ渡ったTypicaとは、まったく別のルートです。島の環境で育つうちに、この系統は独自の性質を獲得していきました。
十九世紀半ば以降、宣教師や入植者の手でBourbonはアフリカ大陸や中南米へ広がります。特にブラジル、エルサルバドル、グアテマラ、ルワンダ、ブルンジといった産地では、今日でも主要品種として重要な位置を占めています。
Route
Arabicaが世界へ渡った、二つの道
- エチオピア南西部原産地野生のArabicaが今も残る高地林
- イエメン(モカ港)栽培の始まりモカ港から積み出された
- ジャワ島17世紀末オランダ人がイエメンの苗を持ち出す
- アムステルダム1706年植物園へ送られる
- パリ1714年ルイ十四世に贈られ、王立植物園へ
- マルティニーク島1723年Gabriel de Clieuが苗を運ぶ。中南米のTypicaの源流
- ブルボン島(現レユニオン島)18世紀初頭フランス人がイエメンから運ぶ。Bourbonの名の由来
- アフリカ大陸19世紀半ば以降宣教師や入植者の手でアフリカ大陸と中南米へ
収量と味の両立
Bourbonの最大の利点は、Typicaより二割から三割ほど収量が高いことです。樹形はより密に葉をつけ、枝の間隔も詰まっている。それでいてカップの評価も高い。甘さがしっかりと出て、酸は柔らかく丸みがあり、口当たりに厚みがあります。
生産性と品質を両立させたこの品種は、中南米のコーヒー産業を支える基盤になりました。ただしさび病への弱さはTypicaと変わらず、この点が二十世紀後半の育種の大きな課題になっていきます。
色のバリエーションと、豊かな子孫
Bourbonには実の色による変異があります。一般的なRed Bourbonのほか、Yellow Bourbon、Orange Bourbonが知られています。Yellow Bourbonはブラジルで見つかった変異で、完熟しても赤くならないため収穫の見極めに経験を要しますが、甘さが際立つと評価されています。
Bourbonから派生した品種は数多くあります。ブラジルで見つかった矮性変異のCaturra、エルサルバドルのPacas、コスタリカのVilla Sarchi。いずれも樹高が低くなる変異で、密植と収穫効率の向上をもたらしました。ケニアのSL28にもBourbon系の遺伝的背景があるとされています。
系譜を辿ると、現代のスペシャルティコーヒーの相当部分がこの島の系統に行き着きます。地図上では見落としてしまうような小さな島が、世界のコーヒーの味を決めた——そういう話です。
Family tree
品種の系譜(上から下へ世代が進む)
← 横にスクロールできます →
- エチオピアの在来種 → Typica(イエメン経由)
- エチオピアの在来種 → Bourbon(イエメン経由)
- エチオピアの在来種 → Geisha
- Typica → Maragogipe
- Typica → Mundo Novo
- Bourbon → Mundo Novo
- Bourbon → Pacas
- Bourbon → Caturra
- Bourbon → Villa Sarchi
- Bourbon → SL28 / SL34
- Canephora → Timor Hybrid
- Maragogipe → Pacamara
- Pacas → Pacamara
- Mundo Novo → Catuai
- Caturra → Catuai
- Caturra → Catimor
- Timor Hybrid → Catimor
- Villa Sarchi → Sarchimor
- Timor Hybrid → Sarchimor
- Sarchimor → Marsellesa
- Sarchimor → Centroamericano
- エチオピアの野生種 → Centroamericano
- Marsellesa → Starmaya
- Centroamericano → Starmaya
品種どうしのつながりと性格の違いは、品種の系譜を読むで一枚の図にまとめています。


